住まいのニュース
中古住宅の現状・価値が見てわかる、インスペクション制度が施行されます。
これまで住宅は、「住まい」であると同時に「資産」でもありました。 ところが最近は、空家問題などで見られるように、「負動産」とネガティブに呼ばれる こともあります。居住している期間に価格が下がるのは仕方ないのでしょうか。
シロアリなど目視範囲で住宅診断
2017年4月1日より宅建業法の一部が改正されて施行されていますが、それに関連して私たちも知っておきたい制度が、2018年4月1日に施行されます。それが“インスペクション”と呼ばれる制度。建物現況調査や住宅診断・検査と訳せば分かりやすいでしょうか、中古住宅の売買、古い家を自分好みに改装して住むのが当たり前な海外では以前からある制度です。この、売買時点の住宅の状況を把握できるインスペクション、具体的にはどんなものでしょうか。国土交通省が、どの検査事業者が行っても同様の結果が得られるように定めた「既存住宅インスペクション・ガイドライン」には、中古住宅の現況を把握するための基礎的な現況検査、例えばシロアリの害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れなどの「構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの」や、例えば給排水管の漏れや詰まりなどの「雨漏り・水漏れが発生または発生する可能性が高いもの、設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの」が診断項目として挙げられています。目視可能な範囲に限定されていますが、安心して中古住宅の取引ができそうです。
目視限定だから瑕疵保険加入!
ただし今回の施行では、インスペクションの実施自体が義務づけられたわけではなく、仲介業者に対して「媒介契約の締結時に、インスペクション事業者(インスペクター)の斡旋に関する事項を記載した書面を依頼者に交付すること」「買主などに対して、重要事項としてインスペクション結果の概要などを説明すること」「売買などの契約の成立時に、建物の状況について売主・買主双方が確認した事項を記載した書面を交付すること」の3点を義務づけています。それにより中古住宅取引における情報提供の充実を図ろうというのですが、前述したように“目視可能な範囲に限定”で効果があるのでしょうか?それには次のような狙いもありました。それは、もしインスペクションで確認できない重大な欠陥が発覚した場合に、その補修費用を保険金でまかなえる「既存住宅瑕疵保険(かしほけん)」の加入を促すことを狙っているのです。そうすれば購入後のトラブルも防止できるし、瑕疵保険に加入するためには検査機関による診断で保険会社が求める品質を満たす必要があるため、建物の状況も調査されるというわけですね。なるほど。
売主も買主も品質本位で取引
実際の場では、仲介業者は実施されたインスペクションの結果を、買主に対して重要事項説明時に説明しなければならなくなります。そうすれば購入判断や交渉では“建物の品質”が第一となるため、「便利な割に安いですよ」とか「売主さんがきれいに使っていましたよ」などというイメージの判断材料、つまり営業トークは効果がなくなってきます。一方、仲介業者と売主との媒介契約締結時においても、仲介業者はインスペクターを斡旋できるかどうかを売主に示さなければならなくなります。つまり「弊社はインスペクションを通じて物件の安全性を買主にアピールする売り方をお勧めしているので、ご希望があればすぐにご紹介しますよ」と言うか、「弊社はインスペクションについては対応していないので、ご依頼いただいても斡旋できません」と言うかです。これによって売主は否が応でもインスペクションという言葉やその内容を知ることになります。そうすれば、実際の調査結果に基づいて具体的なデータが購入判断に活かされれば、売主の意識も買主の意識も“建物の品質”を重視する取引の本来の姿に変わっていくのではないでしょうか。
大切に使うことで生まれる価値
木造住宅が一般的な日本では昔から、売主も買主も、戸建木造住宅なら約20年で価値ゼロとなるのが常識と考えてきました。しかし、例えばTVが4K、8K、16Kと発達していっても視聴者が離れていくように、それは住まいの本質を見失ったからではないでしょうか。住宅も、大切に使い続け適切に維持管理することで生まれる価値を、この制度が教えてくれます。
<山木屋フォーシーズン Vol.216/2017年 春&夏の号より>
相続した家を空家、更地にせずに活用! でも、安易なアパート経営には注意が必要。
平成25年の住宅・土地統計調査(総務省)によると、日本の総世帯数5千245万世帯に 対し、総住宅数は6千63万戸。なんと820万戸もの住宅が余っているのです。さらに20年後には、3戸に1戸は空家になると予想されています。
空家にかかる維持費は想像以上
人口減少にともなって空家が増えてきているようです。特に首都圏に住んでいる方には、地方や遠くの親の家を相続するケースが増えていくことでしょう。そして、相続した親の家は使われず空家となり、相続税ほか固定資産税などの支出だけが残ることになります。たとえば、都内に勤め郊外にマンションを購入したサラリーマンが、地方に住む両親を亡くして実家を相続したとしましょう。両親との、子供のころの思い出が詰まった家を処分するのが忍びなく、そのまま所有し続けます。しかし使わないままでいると家は朽ち果てるだけなので、地元の方の防犯上からも、季節ごとに夫婦で訪れ、家や庭の掃除をします。その交通費が新幹線で片道1万円だとしたら夫婦で年間16万円、掃除に来るときに必要で維持している光熱費、火災保険等々、固定資産税や住民税のほかにもいろいろな出費があり、雪深い地方であれば雪下ろしを依頼する費用もかかり、合計数十万円が必要になってきます。もちろん築年数が経てば家の修繕費も必要です。このように空家を維持していくには、多くの費用を考えねばなりません。
更地も空家も特例はありません
今ある空家の半分強は賃貸物件のようですが、1/3以上が、何にも使用されていない建物となっています。使わないままなら、取り壊してしまえばよさそうですが、なぜそのままなのかといえば解体費用が掛かりますし、いちばん大きな理由は固定資産税が高くなるからでした。従来は、建物を解体して更地にすると、土地にかかる固定資産税が3倍以上になっていたのです。これは「住宅用地の課税標準の特例」という措置があったからで、家が建っている土地は、本来の固定資産税の1/6に軽減されていました。建物がありさえすれば良かったのです。これが15年より「空き家対策特別措置法」が施行されたことで、空家があっても、倒壊の恐れや衛生上問題のある空き家=「特定空家」と判断され、改善されずに勧告を受けると、固定資産税などの住宅用地特例から除外されることになったのです(16年度分から特例の対象外)。
家賃保証のアパート経営???
空家が増えているのには、15年1月からの相続税の改正も影響しているようです。その内容は以前に本誌でもご紹介したように、相続税の申告が必要なボーダーラインが引き下げられたことです。たとえば配偶者と子供2人が相続する場合、かつては8千万円が非課税のボーダーラインだったのに、一気に4千8百万円まで引き下げられたのです。特に東京、横浜近郊では影響が大きく、ほぼ半数以上の人に申告が必要になったともいわれています。こうした空家の状況をいっそう混乱させているのが、一部の賃貸住宅管理業者に勧められた、将来の見通しが甘いアパート建設です。“財産の評価減と資産運用”を掲げ、アパート建設を“○○年間一括借り上げ・家賃保証”をうたってオーナー様に勧めます。しかし、一般的に首都圏は人口流入が続いて不動産の動きが活発で、賃貸住宅の需要も多いと言われてきましたが、ある不動産調査会社の調べでは、現在、神奈川県の借主募集物件の空室率は35%強、東京23区で30%強というデータも。結果は、相続税対策で銀行から借り入れしてアパートを建てたものの入居率減、家賃(収入)減で、空室(家)とローンだけが残ったというわけです。
空家を壊さずリノベーション
建物は空家のままでいると日一日と朽ち果てていきます。しかし近年は、リノベーションという言葉をよく耳にするように、古い建物を再生させるノウハウが広がってきています。また、以前よりも古い建物への抵抗感もなくなってきており、新築でも既存の画一的な建売住宅やマンションより、住み手である自分たちの感性に合わせて、古さを味わいにした、オシャレにリノベーションされた物件は、むしろ人気が高いほどで、これまで以上に古い建物を活用する可能性があります。将来のリスクを考慮しての空家の活用、土地の活用は山木屋にご相談ください。
<山木屋フォーシーズン Vol.214/2016年 夏&秋の号より>
最後まで我が家に住み続けるためにはリフォーム、建て替えは避けられません。
内閣府による60歳以上の高齢者の調査では、「体が弱った時に住まいをどうしたいか」という問いに対し、37%の方が「現在の住居にそのまま住み続けたい」と答え、最も多かったそうです。あなたはどうですか。(2010年調査)
50代から考えても早すぎない。
あの解答だけでは、回答者の住まいがどんな状況なのかは分かりませんが、「現在の住宅を改造し住みやすくする」と答えた方も27%いたようです。そして、こんなデータもあります。家庭での不慮の事故による死亡件数の80%が65歳以上の方で、原因を見ると、約5人に1人が階段などでの「転倒・転落」です(2012年厚生労働省調査)。心情的には、家族の歴史を刻んできた“我が家”にずっと…というのは理解できますが、住人のライフスタイルや健康状態の変化、周囲の環境の変化、住宅の老朽化などを考えると、いつまでも昔のままでいられないのも当然です。そこでバリアフリーを念頭に置いた住宅リフォーム、建て替えとなるわけですが、経済的事由や「リフォーム・建て替え後、何年暮らすのか」と考えると、早めに手をつけた方が良いかもしれません。『高齢化社会の住まいをつくる会』という団体では、できれば50代から考えた方がいいとも話しています。若いうちに自分の身体が衰えた状態を想像するのは難しいかもしれませんが、僅か数センチの段差に足が上がらないこともあるのです。
長い目でみると建て替えが有利…
さて、リフォームにするか建て替えにするかを考えるとき、費用のことを考えずにはいられません。手すりの取り付けや段差の解消といった後付けの改修なら、介護保険が使えますが、20万円(自己負担1割)が上限。本格的なリフォームとなれば数百万円単位の出費は避けられません。となると、いっそバリアフリー仕様で新築(建て替え)という考えも出てきますが、正確には建築プランによって異なるものの、旧建設省建設政策研究センターの試算によれば、後日リフォームよりもバリアフリー仕様で新築のほうが有利なのだそうです。これによると、予め手すりを取り付けたり、段差をなくしたりなどの基本的バリアフリー仕様を施工すると、平均的な木造住宅で約54万円(非木造で約56万円)のアップですが、これを後日リフォームで施工すると木造で約92万円(非木造で約135万円)と2倍近くになると試算しています。さらに国は、早めにバリアフリー仕様の
住宅にすることで、高齢者が自立して生活できる期間が長くなり、一世帯あたりの介護費用が軽減されるとしています。費用の工面としては、住宅金融支援機構のローンを利用するのが一般的と思われますし、多くのバリアフリー融資が、機構の条件をベースにしているようです。また、リバースモーゲージという方法の利用も良いでしょう。これは、自宅を担保にリフォーム資金を融資してもらい、自分が亡くなった後、自宅を処分して返済に充てるというもの。機構や一部の銀行などが扱っています。ただ、相続に影響するので、利用の際は家族で事前に話し合っておく方が良いでしょう。
住宅金融支援機構の求める仕様
住宅金融支援機構の融資は、バリアフリー仕様の住宅には最も低利の基準金利を適用されることになっており、新築の場合では、基本融資額をベースとして割増融資が加算され、その合計額が融資されます。ということは、この仕様が、バリアフリー住宅の基本的な仕様。その設定の数値は山木屋など施工業者が知っておくべき事で、実際にはバリアフリー仕様を利用する方の状況によって異なります。
住宅金融支援機構の求める仕様
住宅金融支援機構の融資は、バリアフリー仕様の住宅には最も低利の基準金利を適用されることになっており、新築の場合では、基本融資額をベースとして割増融資が加算され、その合計額が融資されます。ということは、この仕様が、バリアフリー住宅の基本的な仕様。その設定の数値は山木屋など施工業者が知っておくべき事で、実際にはバリアフリー仕様を利用する方の状況によって異なります。
<山木屋フォーシーズン Vol.208/2014年 夏&秋の号より>
身体と心に良い効果がある木造住宅。「木材利用ポイント」でお財布も喜ぶ!
以前から木造住宅の良さが言われています。最近では、木造の教室で学ぶクラスは、 インフルエンザで学級閉鎖になる確率が3分の1も少ないとの調査結果があるほど。 それなのに、国産木材は利用されていないようです。
持続的に利用してきた森林資源
昨年の夏のように台風の発生数が多かった年の冬は、寒くなると言われて迎えたこの冬。そして寒さが厳しい冬があけた春。今度は花粉がどうなのか、どの種類の花粉が多いのか気になります。花粉症の方を悩ませる最たるものが杉花粉。戦後、輸入木材の利用が増えて国産木材があまり使われなくなったことから、経済林である杉林の他の森林が荒廃し、結果的に杉林だけが増えたことも、杉花粉による花粉症の原因の一つと言われています。国土の約70%が森林の日本。この膨大な資源を日本人は、使いきらないように持続的に利用してきたそうです。しかし明治時代、殖産興業の近代化により燃料として大量の木が伐採され、所によっては鉱業の影響で、全国的に「はげ山」が目につくようになってきました。そして輸入木材。一部のブランド木材を除けば、林業、国産林は風前の灯火です。日本から木造住宅がなくなる…。
利用することで森林の機能を発揮
実は日本の森林約2千500万haのうち、約1千万haは人工林です。天然林が減少していく一方で、人工林の木は植え続けられており、森林資源としての人工林は増えてきています。問題は国産木材が利用されていないこと。日本の年間の木材使用量8千万立方メートルのうち70%近くは輸入材で、日本の木材自給率は30%弱。日本で1年間に消費される木材の総量を上回る、年間約1億立方メートルの人工林が、資源として増えているにもかかわらず有効に使われていないのです。しかも人工林は、木材として利用するために伐採(間伐)しなくては、光が入らず、しっかりした木が育ちません。雑草や低木も生えなくなり、森林は荒れていきます。昨夏の大雨のニュースで見たように、土砂崩れの原因にもなりますし、地球温暖化の元凶であるCO2を吸収するなどの、森林が本来持っている多面的機能を発揮できなくなります。
今年こそ国産木材・製品を使おう
PM2・5物質で環境を汚染するほど、炭や石炭を燃やしたのでは本末転倒ですが、森林資源は適度に利用するほうが良いようです。そこで国産木材の利用を促進するべく、国が用意したのが「木材利用ポイント」事業です。家を建てたり増築したり、リフォームしたりするとき、杉、桧、カラマツなど対象となる木材を使用することで、最高30万ポイントが付与されます。1ポイント1円相当で、地域の農林水産品、農山漁村地域での体験型旅行、商品券などと交換できる仕組み。以前の家電製品や自動車のエコポイントと同様です。住宅そのものでなくとも、インテリアやエクステリアの木質化、木材製品や木質ペレットストーブ・薪ストーブの購入に対してもポイントは付与されます。木材の湿度調整機能や室内の暖かさ、香りのリフレッシュ・鎮静効果、抗菌作用に加えて、お得なポイント。国産木材いつ使いますか?今でしょう!
<山木屋フォーシーズン Vol.206/2014年 新年号より>
バリアフリーだけがリフォームじゃない。セカンドライフを自宅カフェで楽しむ。
住まいはある意味で生き方の表れ。塀を張り巡らせ玄関を閉じて夫婦二人で暮らすのも、門を開いて地域の方々と交流を深めるのも自由です。奥様自慢のケーキにご主人こだわりのコーヒーがあればベター。
「良かったら居間に上がって」
最近、我が家の周辺を散歩していて気が付きました。ご自宅で何かしらのお店をしているお宅が増えてきているようです。喫茶店やケーキ屋さん、ご主人こだわりの手打ち蕎麦屋さんなどと飲食店が多いようですが、雑貨屋さんや、中には我が家の家人が通うような美容室もあります。この美容室など、これまでの個人経営の店舗と何が違うかといえば、ご自宅を2世帯住宅へリフォームされる際に、1室だけを店舗スペースにした点です。だから常にマンツーマン営業。美容室があるなんて、お宅の目の前まで行かないと分らないのです。これが、近頃人気の「谷根千」あたりの古民家カフェになると、古いことを逆手に取った商売っ気が見え見えで興覚めします。やはり基本は自宅兼店舗。今でも下町で見かけるお年寄り夫婦経営の食堂。テーブル席が混んでくると、小上がりならぬ「良かったら居間に上がって」(それも仏間だったりして)システム。和みます。因みに、調布市内を流れる野川沿いの住宅地には、ご自宅の玄関と別に1間の店舗スペースがあるだけの、美味しい手作りドイツ・ソーセージ屋さんすらあります。
何屋さんでも入りやすさが大事
これらの自宅兼店舗に共通しているのは、早期退職あるいは定年リタイアなど理由はいろいろでも、ライフスタイルの変化に合わせて住まいもリフォームすることでしょう。とくに就職やご結婚などでお子様が独立され、ご夫婦二人では住まいが広すぎると感じるようになったら、自宅兼店舗の始めどき。地域の方々のコミュニケーションの場となって、新しい生きがい発見になるかもしれません。リフォームのポイント①は、目立つ必要はありませんが目の前まで行けば店舗だと分り、「入れる」と分かること。自宅を取り囲む塀があったなら、その一角を取り壊すのも必要でしょう。②その上で店舗部分とプライベートな居室部分をはっきりと区別すること。オーナーの生活臭たっぷりのお店ではリピーターはやって来ませんよ。あとはオーナーであるあなたの自由。靴を脱いであがってもらうスタイルでも良いし、無理にバリアフリー対応にしなくとも構いません。また、和室の押し入れをディスプレイ棚に改装したり、店舗部分の天井高を高くするために天井を取り払って梁をそのまま見せたり、アイディア次第で演出できます。ただカフェ・喫茶店など業種によっては、店内設備に各自治体の保健所によって細かい基準が設けられている場合がありますので注意が必要です。カフェ・喫茶店の場合の概略は以下のようになっています。●食品を衛生的に保管するのに十分な大きさの冷蔵設備(温度計要)●2槽以上の洗浄槽とお湯の出る水栓。従業員用の手洗い設備●清潔な更衣室(自宅の居室を兼用可) ●近隣の迷惑にならない配置の換気・排気設備●清掃しやすい構造の床・内壁・天井●蓋があり耐水性で十分な容量がある汚物処理設備●食器・器具保管庫などには扉をつける等です。
半年以上かけて準備をしっかり
店舗の造作やリフォームのことは山木屋にご相談いただくとしても、工期には3カ月はかかるとみておきましょう。そしていよいよ保健所へ営業申請を提出することになりますが、若干の変更なら対応できるよう、工事完成予定日の10日前までに済ませます。このとき必要なのが、営業許可申請書、営業設備の概要・配置図、許可申請手数料、必要に応じて水質検査成績書、食品衛生責任者の資格を証明するもの、の5点です。配置図では前述の従業員用の手洗い設備やお客様用トイレと調理場の位置関係や構造がチェックされますので、工事着工前に設計図を持参して確認しておくと良いかもしれません。食品衛生責任者は、喫茶店や飲食店営業等の調理業のほか、菓子や食品の製造業、食料品販売業などを営業する施設には、必ず専任の食品衛生責任者を置かねばならないと定められている有資格者です。栄養士や調理師などの有資格者でなければ、全国にある食品衛生協会が行っている「食品衛生責任者養成講習会」を受講することになります。同講習会は自治体ごとに月1回程度、定員制で開催されます。丸1日の講習で修了証が授与され、それが申請時の資格証明になります。そのほか、コーヒーや紅茶の美味しい淹れ方を学べる専門学校や、店内のインテリアなども含めてカフェの経営を学ぶ専門学校さえあるようです。いずれにせよ、発案から開店まで少なくとも半年は必要でしょう。
<山木屋フォーシーズン Vol.204/2013年 春の号より>
「こんなはずじゃなかった」と言わない、太陽光発電の失敗しないポイント。
売る側買う側双方の知識不足
太陽光発電のメーカーの多くが、パワーコンディショナーには1年の保証しかないのに対して、太陽電池パネルについては10年以上もの「出力保証」をつけています。素人考えでは、太陽電池パネルには磨耗をおこす可動部がないから故障・不具合が少ないと思え、現にそう説明する業者もあるようです。また太陽電池パネルそのものをつくっているシリコン結晶が、非常に安定的だということも理由にされています(現在主流となっている結晶シリコン型の場合)。しかし太陽光発電が普及するにつれ、消費生活センター等への太陽光発電に関する問合せや苦情も増えているといいます。その多くは「もっと売電できると思っていたのに…」とか「聞いていたほどの発電量がない…」というもの。そして、その理由は、メーカーや販売、設置工事業者の説明不足に加え、売る側と私たち買う側双方の知識不足にあるようです。それも太陽光発電の基本的なことでした。
発電不調の原因は枯れ葉?
苦情にさえなってしまう太陽光発電で忘れがちな基本。それは「曇りや影になって太陽光が不十分では、太陽光発電は発電しない」ということです。ですから太陽光発電設置の際には太陽電池パネルに影が入らないようにする必要があります。自宅や他の建物の、樹木の、アンテナの影などが太陽電池パネルにかからないよう、影が長くなる冬季を想定して設置します。秋から冬にかけては枯れ葉がつもっても発電不調の原因になります。一方、燦々と陽光あふれる夏には、熱くなりすぎて発電不調になります。そこで一般的な太陽光発電は、太陽電池パネル部分と屋根に取り付ける架台部分との間に風が通る隙間を設けてあり、温度の上がり過ぎを防いでいます。そして最重要ポイント。それは、太陽電池パネルは基本単位である「セル」を何枚も並べてつないであり、そのつなぎ方は乾電池を直列につないだものに例えられるということです。つまり、影あるいは高温によって少数のセルの発電能力が落ちただけで全体の発電量に影響し、最悪の場合発電できなくなるのです。もちろん最新機種ではこうしたトラブルを防ぐ仕組みになっているようです。
補助金申請は余裕をもって
太陽光発電は導入時に、国(太陽光発電普及拡大センター )や自治体(県や市町村)から補助が受けられ、横浜市なら国・県・市の3者から受けられます。しかしパネルやパワーコンディショナー以外にも、太陽光発電には各種の補器があり工事も必要で、どの範囲までを補助の対象とするかは制度によって異なります。注意すべきは、どこの制度も年度単位で予算枠があり、申請時に終了している場合もあり得るということ。例えば国の場合には、ホームページに「平成○年度分の補助金の見込み件数」などと表示してあります。また必ずしも3者併用できない場合や、前述の対象範囲によって使い分ける必要もあって複雑。それだけに約束の軽〜い業者には要注意です。
<山木屋フォーシーズン Vol.203/2013年 新年号より>
神奈川産木材を使用する家づくりで二酸化炭素削減に貢献する!
CO2を封じ込める木の性質を利用
この制度はCO2削減を狙い、建築に積極的に木材を使用することを後押しし、あわせて協定を結んだ地方自治体の木材を使用することで当地の森林整備を促進するというもの。区内で新築される述べ床面積5千平方メートル以上の建築を対象として、CO2固定量認証を受けた「協定木材」を1平方メートル当たり最低0・001立方メートル以上使用することが求められます。そこでCO2固定って何?となるのですが、それは、植物や一部の微生物が空気中から取り込んだCO2を炭素化合物として留めておくシステムで、この機能を利用して大気中のCO2を削減できるというわけです。方法はいくつかありますが代表的なのが光合成。光エネルギーを利用して水の光分解を行って酸素を発生。その過程でCO2をグルコースなど有機化合物に固定します。ご存知のように森林を構成している一本一本の樹木は、光合成を行うことにより成長し、そして炭素を木材の形で幹や枝などに蓄えているのです。企業がエコロジー活動の一環で植林するのも、それによるカーボンオフセットを狙ってのことです。
住宅はコンクリート造より木造
以前に本誌でご紹介したように、制度に定められた5千平方メートルに近い4千692平方メートルのマンション(8階建て64戸程度)の例でみると、建築に用いられる資材が製造時に排出するCO2は約6千873トン(コンクリート8千384・7トン、鉄筋443・1トン、ガラス4・9トン、型枠2万721・8平方メートル使用)。建築時には運搬するトラックやダンプカーの排気、建築重機の排気などが加わり、CO2排出量はもっと多くなります。ですから少しでも多く木材を用いることでカーボンオフセットし、あわせて国産材を推奨することで、林業の復活にも貢献しようというのでしょう。これを前述のCO2固定という見方でみると、施工面積150平方メートルに約30立方メートルの木材を使用した木造住宅の場合、木材に蓄えられている、つまり固定された炭素量は7・5トン。同規模のマンション住宅1・6トンの約5倍近いことがわかります。そう考えると私たちも規模の小さな個人住宅でも横浜であっても、コンクリート造より木造を選ぶ方がCO2排出量の削減に貢献できそうです。それに国産、いっそ神奈川産木材を指定して使用すれば効果は大。木造住宅でも「SE構法」や「GUTT構法」など堅牢で間取りも自由な技術があり、コンクリート造とそん色ありません。リフォームしながらでも長く使えます。
神奈川産指定で得するプラン!
こうした国産木材を積極的に使おうとする取り組みを国は進めており、10月を「木づかい推進月間」と定めるなど、各施策を推進しています。連動して神奈川県には“県内産の木材を一定量以上使用して居住用住宅を建築した施主”に対して補助金を交付する「かながわみどりの家づくり補助金制度」があり、上限40万円の補助が受けられます(募集期間が決まっているようです。詳細は神奈川県まで)。また、横浜銀行「かながわ木づかい住宅ローン」、JAバンク「JA住宅ローンとくとくプラン」といった金利優遇の住宅ローンもあります。そのほか私たちにできる国産材の利用としては、まな板、割り箸、すのこ、うちわなどの木材製品、紙製飲料缶(カートカン)などを買うときに、国産材が使われているか気をつけたり、国産材を使った製品であるかどうかを次のマークを目安にして見分けて購入するのも良いでしょう。
<山木屋フォーシーズン Vol.199/2011年 夏秋合併号より>
太陽の光を使うか熱を使うか、住まいのエコに、家計に役立つのはどちら?
以前のソーラーとは違います
先頃の事業仕分け第3弾の際、太陽「光」発電への助成制度と太陽「熱」発電への助成制度が別々にあるのはムダだ…というような報道がありました。詳細やその後の経過は不明ですが、再生可能エネルギーとして考えれば同じようなもので、予算は一元化して当然に思えるし(そもそも“エコ”のための制度なのに管轄省庁が違うケースもありますね)、でも「光」と「熱」は違うわけですから、これは仕分け人も、太陽と付いただけで以前の“ソーラー”を思い起こして、ひとくくりにしているのだなとも思えます。しかし、太陽の光とその熱を利用するという意味では確かにソーラーなのですが、かつてのソーラーシステムが、取付施工業者の乱立から悪質な業者もあらわれてイメージダウンになり、期待されたほどには普及しなかったことから、業界ではソーラーという言葉を使わずに太陽光、太陽熱と明確に区別して呼んでいるようです。もちろんそれぞれに異なる特徴があります。
いちど発電するか直接使うか?
太陽の光とその熱を利用するシステムは、主なものに3種類あります。ひとつは以前のソーラーと言えばこれの「太陽熱温水器」。その名の通り、太陽光の熱(暖かさ)で水を温めてお湯にして使います。100度以下の低温で比較的簡単に利用できますが、用途も限られます。そして最近の主流は「太陽光発電」。半導体の光電効果を利用する素子を集めた太陽電池で、光エネルギーを電気エネルギーへと変換します。ご承知のように家庭にも設置でき、発電して余った電気を買い取ってもらえるのですが、広く地域レベルでのCO2削減の意味では、各家庭の太陽光発電を繋ぎ、「スマートグリッド」と呼ばれるネットワークを構築することで、家庭で余った電気をオフィスや工場など大量に電気を必要とする施設へ送って利用でき、よりムダがありません。もっと大きな電気エネルギーを生み出すのが「太陽熱発電」です。これは、角度の変わる太陽を追尾して集光・集熱して太陽熱を集める集熱器で、5百~3千度の高温熱をつくり、この熱で高温・高圧の蒸気を発生し、タービンを駆動して発電します。このままでは発電所規模の大きなものですが、家庭用も開発されています。
シンプルなほど変換ロスがない
さらに太陽エネルギーの利用を「変換」で見てみます。太陽温水器は、「集熱」→「熱エネルギー」→「お湯を沸かす」とそれほどムダがなく、太陽光発電は「集光」→「光エネルギー」→「発電」→「電気エネルギー」→「お湯を使う」となり、多少の変換ロスが見込まれます。これが太陽熱発電では、タービンを回す運動エネルギーへの変換なども加わり、そのロスも大きくなってきます。火力発電も同様ですが、燃料を使用する分環境のダメージも増えてしまいます。
<山木屋フォーシーズン Vol.197/2011年新春号より>
光熱費も減ってCO2削減にも貢献できる住宅設備を選ぼう。
ガスと電気、どちらを選ぶか?
以前にグルメ漫画「美味しんぼ」でチャーハンの話を読んだのですが、ガスの炎で炒めたチャーハンが本場のそれのようにパラッと感じられないのは何故かという話題、理由が分かりますか。それはガスの火力をいくら強くしても、ガスの主成分であるC(炭素)とH(水素)のうち、Hが加熱されて酸化すればH2O、つまり水(水蒸気)になって鍋の中のチャーハンに混じり、結果としてチャーハンがペチャペチャ感じられるということでした。筆者もある著名な中華料理の鉄人に聞いたことがあるのですが、本場中国の料理店では、いまだにガスを使わず、コークスや石炭で6〜10万キロカロリーの火力にしているそうです。美味しそう…でもそれだけCO2排出ということになるのでしょうか。
料理好きの方が選ぶエコウィル
田舎から送ってもらった正月の餅だけは電気でもなくガスでもなく、炭をおこして七輪で焼く筆者ですが、ガスを使ってエコしようと考える人の住宅設備といえば、既存のガスを使うことで発電する、エコウィルなどです。でもどう使えばCO2排出量削減、我が家の光熱費削減の面で、効果があげられるのでしょうか。エコウィルは家庭用ガスエンジンコージェネレーション(熱電供給)システムというもので、ガスを使ってお湯と電気を作るシステムです。CO2排出量削減の点では、無駄をなくして効率よくエネルギーを使用するという意味で効果はあります。すでに導入された方へのアンケートでは、エコウィルなどは料理好きでガスを好む方が、ガス・電気併用住宅の設備にとして選ばれているようです。それも多くのケースが新築、改築時に導入のようで、大抵は前宅より大きく、高気密・断熱化していたりするので、一概に光熱費を比べるのは難しいかもしれません。料理好きのAさんもそんなお宅。家自体が大きくなり高断熱にもなっていました。
発電時間帯に1kWを使い切る
Aさんの結果として光熱費は前年同月比より5%減少と、減少傾向にあるとか。その理由は工夫、使い方にあるようです。Aさんが夕飯の支度にとりかかるのは夕方の5時頃。このときエコウィルの発電を開始させます。家族の食事が終わる夜8時頃には給湯完了。それから入浴ですが、そのほかアイロンを使ったりパンやケーキを焼いたりと、自家発電を余すことなく使ってしまうのがコツ。以前はパンを朝に焼いていたのですが、エコウィルの発電時間帯を考えてこの生活パターンになったそう。実はエコウィルで発電した電気は、太陽光発電のように電力会社に売電できません(買ってくれないのが本当?)。そのため使用電力が発電電力の1k
Wに満たない場合はムダになり、この1kWをフルに使いきってこそ節約効果も最大になるそうです。(最近になって1kW以下発電タイプが登場してきたようです。)
<山木屋フォーシーズン Vol.194/2010年 新春号より>
欠陥、手抜きの逃げ得は許さない!「住宅瑕疵担保履行法」2009年10月1日施行。
10月1日前に引き渡しを急ぐのは?
以前本誌でも名前をご紹介した「住宅瑕疵担保履行法」が、本年10月1日からやっと完全施行されます。これは、あのH社のような、新築後10年内に住まいに欠陥が見つかっても、販売業者、建設業者が倒産していて補修や建て替えがされない場合に、消費者を保護するべく、業者にあらかじめ資金を確保しておくよう保険加入か供託(法務局にお金を預けること)を義務づける法律です。これならば万一欠陥があっても安心なのですが(無いのが当然ですが)、静岡県のFハウスのケースでは、着工時に総額の70%の代金を前納させておきながらの倒産。ここは「完成保証」すらなかったという悪質なのもので、法律施行を前提とした、計画倒産、いや詐欺とも言えるものでした。やはり、判を押す前にこれらの保証を確認しておくのが消費者の義務ですね。
カバーされるのは主要構造部分
では、どんな場合にこの履行法でカバーされるのかを見てみましょう。住宅品質確保促進法(品確法・00年施工)と同様の主要構造部などで(イラスト参照・賃貸も可)、「住むのに支障が出る」ようならば対象となりそうです。適用されるのは、10月1日の履行法施行日以降に購入者に引き渡される住宅で、引き渡し後10年間は業者の責任が続きます。契約は施行日前でも構いません。カバーされないのは、中古住宅のリフォーム(もともとの欠陥なのか、リフォームで生じたものか判断が難しい)、シックハウスなど化学物質、水道やガスの配管設備など、地盤(地盤配慮した基礎になっているかは個別判断)などです。やっかいなのは工事途中で見つかった欠陥です。履行法は新築後を対象としているので、工事を中断して補修の交渉をしている間に業者が倒産してしまったら…。
場合によっては購入者が保険金請求
履行法適用となった場合ですが、保険方式では、補修などの費用として業者が保険金を受け取り、その額は費用の80%となります。もしも業者が倒産している場合や業者が補修交渉に長期間応じない場合には、住宅購入者が直接、保険法人に保険金を請求できます。この場合には、契約の範囲内で費用の100%が支払われます(悪質な業者から購入者を救うために「住宅購入者等救済基金」も設置)。この保険金の上限は契約する保険法人によって異なりますが、国土交通省によると、過去の事例では1戸あたり2千万円程度の補修費用となっていることから、ほとんどの保険法人が保険金の上限を2千万円としているようです。供託方式で業者倒産の場合には、住宅購入者が法務局に還付金を請求して受け取り、他の債権者より優先されることになっています。
販売価格上乗せだからこそ契約確認
このように履行法は、品確法と同様に供給される住宅の品質を確かなものに維持し、一部の業者の不正を防ぎ、被害から消費者を守るためのものです。ですから保険方式では保険に加入するのは業者で保険料を払うのも業者になります。その掛け捨ての保険料は床面積120㎡の戸建て住宅で6万7千〜9万2千円(集合住宅はこれよりも割安)、供託方式の供託金は業者の10年間の新築住宅供給個数で異なり、10年間に5千戸供給した業者なら計3億4千万円、1戸あたり6万8千円(戸建て・集合住宅とも)だそうです。と、気になるのが保険料が販売価格に「上乗せ」されるのでは?ということで、十分にあり得そうです。ただ保険法人が工期中に第三者チェックをするようなので、工事ミスを防ぐメリットもあります。供託金は業者のもともとの資金を預けるだけなので上乗せは少ないだろうとのことです。いずれにせよ、保険方式供託方式ともに契約書などに記入することが義務づけられていますので、分からないときは遠慮せずに業者に確かめます。保険方式では引き渡しの際に保険の証明書を必ず受け取りましょう。また、施行前に引き渡される住宅でも、任意に保険に加入できるので業者に確認すると良いでしょう。
<山木屋フォーシーズン Vol.192/2009年 春の号より>